十字架



● おすすめ度 ★★★★★

● 熱中度 ★★★★☆

● ためになる ★★★★☆


 中学2年生がいじめを苦に自殺。


同じく中学2年生 主人公「僕」 はショックを受ける。


自殺した 藤井俊二 「フジシュン」 は 「僕」の幼馴染。


幼いころは、よく遊んだが、中学になってからは疎遠になっていた間柄。


フジシュンが自殺にあたり、遺書を残していた。


その遺書の中で、4人の同級生の名前が記されていた。


壮絶ないじめをした主犯 2人、フジシュンが恋心を抱いた女子1人、


そして、「親友」として、感謝の言葉を書かれた 「僕」・・・




これは、遺書に名前を書かれるという 「十字架」 を背負った


20年に渡る 「僕」 の物語。




おススメするポイント

●大事なことを教わる


 テーマが自殺、残された遺族・・


目を背けたくなるようなお話ですが、


読んでみて大切なことを教わったような気がします。



●おもしろい?

 誠に不謹慎ながら、「おもしろい」 というよりも


「次の展開が気になる」 という方がふさわしいか。


小説として完成度が高いというか、


さすがに小説を書き慣れているなぁと感じます。



●読みやすい

 テーマは重いのですが、意外に小説自体は読みやすい。


難しい言葉やら表現もなく、スラスラ読める。


スラスラ読めるから、余計なことを考えずにストーリーを追うことに


集中できます。




まとめ

 
 数年前に、ヒットしたドラマ 「とんび」 父と子の素晴らしい物語で、


感動し、泣いたという方も多いはず。私も非常に感動して、


原作者 重松清さんに興味を持ちました。他の作品はどんな感じなのかなぁと。


 ただ、どの作品から読めばいいのか?(重松初心者向けの代表作は?)と手を出せずにいました。



 そんな中、本屋でたまたまですが、本作「十字架」の文庫版が平置きされているのを発見。


本屋店員さんの説明文も添えられており、それで興味を持ち手に取りました。



 私にとっては、初の重松清作品となり、読んでみて


「読者もまた気が病んで、痩せたような気になる作品」 でした。


以下理由を3点挙げていきます。



 1. 親の気持ちがヒシヒシと伝わる


 2. 家族の一人が死ぬということがいかに大きいか


 3. それぞれの登場人物の悲鳴に近い苦悩が伝わる




1. 親の気持ちがヒシヒシと伝わる

 
 詳細は読んでいただくとして、同じ子を持つ親としては、


そうなるだろうなぁと読みながら感じます。


また、ニュースで、中学生や高校生のよくいじめを苦にした自殺を


目にしますが、その後のことは報道されません。


 残された親はこんな気持ちでいるのかと思うと、


心臓を鷲掴みされたような気になります。




2. 家族の一人が死ぬということがいかに大きいか


 いじめ を苦にした自殺。両親はもちろん、兄弟の人生すら変えてしまう。


自殺した本人には罪がないが、その影響力はここまでなのかと


本作を読んで気付かされる。




3. それぞれの登場人物の悲鳴に近い苦悩が伝わる


 遺書に名前が載った4人の苦悩はもちろんですが、その他の人物も。


特にフジシュンの父は、無口ということで非常に印象に残る。


物語が主人公が思い出すという形をとっているので、フジシュンの父が


何を思い、どう感じているか無口ということで詳細は語られない。


 ただ、息子を、家族を愛していることは読者にも十分伝わるはずだ。


息子の自殺後、比較的目に見える形で変化が現れる母親と


白髪が増えたくらいしか、無口ゆえに変化のない父親の対比は、


読者に強烈な印象を残すはず。



 重松作品最初にしては、テーマが重いかと思いもしましたが、結果的にはよかった。


丁寧に人物の心情描写をしていることや、考えさせられるテーマということで、


いろいろな意味で心に残る名作に出会うことができました。





十字架

 いろいろ考えせられました。




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