ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷
学校内で不審な転落死を遂げた
城東第三中学校 生徒 柏木卓也。
真相を求める 生徒たちによる「学校内裁判」が、幕を開けた。
弁護人 検事 双方とも互角の法廷闘争を展開する。
今まさに真相に辿り着こうとする生徒たちの目の前に、
ある人物への疑惑が芽生え始めていた・・・
● おすすめ度 ★★★★★
● 熱中度 ★★★★★
● ためになる ★★☆☆☆
おススメするポイント
●臨場感
が素晴らしい。裁判の雰囲気がよく出ている。
検事、弁護人をはじめとした駆け引き、重要証人による一つ一つの証言で、
二転三転する法廷の様子・・・
誰かがウソをついている? 読んでいても読者自身が
裁判の陪審員になったような錯覚をします。
●伏線の回収が
見事。長かった1~2巻で張り巡らされた伏線などが上手に回収。
この辺は、さすが宮部みゆき作品。文句なし。
●1~2巻を読んだ価値
恐ろしく長かった1~2巻でしたが、それぞれの登場人物を丁寧に描いた
結果、それぞれが生きている人物になっている。息遣いまで感じるほど、
「生きた」登場人物たちが、それぞれの思惑からいろいろな言動をする。
第3巻がとびきりおもしろいのは、その下地があればこそ。
まとめ
1~2巻で大きな謎とされたいくつかの事柄は3巻できれいになります。
が、通読後の私の結論は、
「いい意味で後味の悪い物語だった」 ということです。
ネタバレしないように気を付けながら述べていきます。
・ 後味の悪さは結論にあること
・ ヒネリがないこと
・ 優秀すぎる中学生たちに疑問
・ 後味の悪さは結論にあること
ネタバレしないよう注意して書きますが、スッキリしない。
裁判である結論が出るわけですが、論理的に 「ん?」となりました。
詳細は読んでいただくとして、私は
(物証もないし、目撃者もいない。これでいいの?)
と感じました。
・ ヒネリがないこと
学校内裁判を描く第3巻ですが、物語の途中は、
いろいろな証言をいろいろな人がすることで、事件の印象がコロコロ変わる。
その辺がおもしろいわけですが、最後は意外に普通に着地したなぁと。
宮部みゆき作品、いくつか読んでいますがいつも結末が分からないことが多い
のですが、今回は 「鈍感な」 私でも途中から 「オチ」 が読めたような。
まぁ、「鈍感な」私でも気が付くように書いているので、今回は特別、
「オチ」が読めたわけではありません。
「ここに着地するよ、着地するよ~」 とくどいほど言われ続けて、
「あ、ホントにここに着地するんだ」 そんな驚きですね。
宮部さんなら、最後は、
「残念、着地はここでした~」 のような あっと驚く結末かなぁと思っていましたので。
・ 優秀すぎる中学生たちに疑問
賢い中学生ということは、描かれています。
が、中学3年生がここまで上手に裁判をできるのか?という素朴な疑問。
ドラマなどで描かれる法廷での証人による証言を巡る 検事 弁護人の駆け引き。
あの辺を上手にするわけです。15歳の子供が。
しかも、今回の「学校裁判」は最初で最後のもの。つまり初めての裁判で、
弁護人 検事 ともここまで上手にできるのか? という疑問。
というか違和感でしょうかね?もちろん、世の中には優秀な中学生は存在するわけですが。
以上のように、多少モヤモヤしたものは残るのですが、
逆に言えば、スッキリさせてくれないので心に残る作品になりました。
いろいろ書きましたが、
読者を夢中にしてしまうおもしろさは、さすが宮部みゆき そんなところです。

残された遺族の心情を考えると・・・